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漆の特徴を知れば漆のすごさがわかる!


旅館や料亭にいくと、外側を黒く塗られ、内側を赤く塗られた器を見ることがあると思います。

光沢のある深い色合いで、その美しさに目を奪われることもあるのではないでしょうか。 日本の伝統工芸の技法の粋を集めて作られた『漆器』です。 漆器が美しいのには、たくさんの理由があります。

今回は、漆の特徴について詳しく見ていきたいと思います。

器だけではない漆の用途

漆とは、漆の木の樹液を採取したもので、塗料を接着剤として多くのものに用いられてきました。 特に目に触れるのは器であると思いますが、そのほかにも、漆を使用した作品は数多く存在しています。


古くなればなるほど光沢が出る塗料

漆といえば、塗料として用いられるイメージが強いのではないかと思います。 光沢が美しく表現できるのが漆の性質の一つで、昔から塗料として器や家具、楽器などに塗られてきました。


年月を増すごとに硬化して透明になっていく性質を持つため、塗った直後よりも、何年も使用した後の方が光沢が増し美しくなります。

塗布してから20年後がもっとも美しいともいわれています。

蒔絵など、金箔がよく映えるのも漆の塗料としての長所といえます。

金箔がはがれにくく、自然な金色をそのまま表現することができます。

漆には、強酸やアルカリに強く、金を溶かす王水や、陶器、ガラスを溶かすフッ化水素にもびくともしないという特徴があります。

シンナーやアルコールなどのいかなる薬品でも、色褪せたり、劣化することがありません。 さらに、塗装した面は抗菌、殺菌作用があり、菌や虫などの繁殖を防ぐ働きもあります。


美しく仕上げるだけでなく、防腐、防水、防虫などの効果があり、器や家具そのものの強度を強くするという面でも、非常に優れた塗料なのです。


一度固まると溶けることがない接着剤

また、漆には接着剤として用いられる例も多く見られます。 とくに、小麦と練り合わせて磁器の修復に用いられることがあります。


継ぎ目に金粉をまぶすことで『金継ぎ』といわれ、修復前より味わい深く仕上がることから、近年再注目をされている技法です。


ほかにも、乾漆造という技法で作られた興福寺にある阿修羅像のように、仏像に使用される例も多く残っています。

漆を幾重にも塗り重ねて仏像の姿を現していきます。

一旦固まると溶けることのない漆の特徴が、接着剤として大きな効果を発揮するのです。 こうした特徴から、船の材料などに用いられることもあります。


アレルギー防止は食用

漆の用途は「塗り」や「接着」だけではありません。 古くは食用として新芽をてんぷらやお味噌汁に使用したといわれています。

職人さんが、漆にかぶれないために免疫をつける方法として食用としたのがはじまりです。


漆が日本の伝統工芸である奇跡

漆は、現在は日本、中国、タイ、台湾、ベトナム、ミャンマー、インドなど、東アジアに生息する天然のものだけでなく、南米などであらたに栽培されています。


ただ、収穫される地域で主成分ウルシオールの配分が異なったり、気候が製品に与える影響が非常に大きいのが特徴です。


かぶれる漆が高級だった

ウルシオールには、塗料としての光沢や、接着剤として頑丈さなど、漆の主な特徴を担っている性質があります。

また、漆が皮膚につくとかぶれることがあります。 アレルギーによるかぶれも、主成分のウルシオールの作用によるものです。 ウルシオールの配分が少ないと良質な漆とはいえません。

よくかぶれる漆は、ウルシオールが多く含まれていて高級な漆だといえます。

日本と中国で採れる漆以外は、主成分がラッコ―ル、チチオールなど、ウルシオールとは異なるものとなり、光沢や頑丈さという漆の長所が半減してしまいます。


湿気と温度のバランスが重要

ほかにも、湿気や乾燥など「気候」も大変重要な要素となります。 洗濯物を乾かすには、湿気が少ないところに干す方が乾きがいいのいうまでもありません。

ところが、漆の場合、湿度が70%程度あった方がよく乾くのです。

漆には、酵素の働きによって、水分中の酸素を取り込んで液体から個体へと変化するという独特の特徴があります。

湿気の多いところでないと乾きにくいというわけです。

酵素が働く最適な温度も25度から30度と高く、日本の梅雨期に最適なバランスとなります。 日本は比較的湿気の多い国で、漆の主成分に加え、漆を扱う上でも適した国であるといえるのです。


簡単に言うと、日本の漆を日本で使うからこそ「漆の特徴」が活かされるということです。 こうした理由から、漆芸が日本の伝統工芸として栄え、様々な作品が世に贈り出されてきたといえます。


漆の木一本から200gしか採れない

漆の木の苗を植えて、漆の樹液が採れるようになるまで8~12年程度の歳月を要します。 10年程度待って、ようやく漆の採取が可能となるわけです。

ところが、一本の漆の木から採れる漆の量はわずか200g程度。

さらに、一度採取した木からは、複数回採取することはできないのです。

漆が本当に貴重な理由がよくわかっていただけると思います。


まとめ

漆は、乾いて固くなることで透明感を増し、光沢が深まっていくということが大きな特徴です。 加えて、防腐、防水、防虫、防薬、抗菌、絶縁など、非常に強固な性質を持ち、頑丈であることです。

こうした特徴を見ていると、漆は万能であるとさえ思えてきます。 日本のさまざまな伝統工芸品には、必ずといっていいほど漆が使用されているのも納得できますね。

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