漆器によくつかわれている塗料の漆ですが一体どうやって採取をしているのでしょうか。 じつはとても手間のかかる採取方法によって集められているのです。 今回はそんな漆の採取について詳しく見ていきましょう。
そもそも漆って
漆器製品などで使われている「漆」ですが、そもそも漆というのは樹液です。 ウルシの木という木から採取します。採取したての色は乳白色で「生漆(きうるし)」と呼ばれます。
漆を採取するには
漆の採取方法は職人が道具を使って漆の木に傷をつけ、そこからでてくる樹液を集めます。 これを「漆搔き」と呼びます。 漆搔き専門の職人がいるほど難しく、採取する際にはいくつかのポイントがあります。
漆の採取は繊細
ウルシの木の樹液は皮と木質の間からが一番よく取れるので、傷を深くつけすぎると樹液が木の中に入っていってしまいます。 ですので、木の表面の皮だけを傷つけたくさん樹液がでるように調節をする必要があります。単純に大きく傷をつければたくさんとれるというものではありません。
傷をつけてから日にちがたつと量が多くなる
ウルシの木は傷をつけてから日にちがたつと木から出てくる樹液の量は多くなります。 ウルシの自然治癒力を利用した方法です。 人間が血液で傷を固めるのと同じで、ウルシの木は樹液を出して傷を固めようとするのです。 ですので、最初に傷をつけた日か数日後にまた傷をつけるとさらに樹液が出てきます。 傷は一度にではなく徐々に大きくしていくのがポイントです。
漆搔きには2つの種類がある
漆の採取方法には2つの種類があります。 「殺し搔き」「養生搔き」と呼ばれています。
殺し搔きはその名の通り、木を枯らしてしまうこと前提で行う採取方法です。 枯らしてしまうのが前提なので、取れるだけ取ります。 しかし、幹の根本をあらかじめ切っておくと、そこから新しい芽がでてきて、素早く育っていき数年で漆がとれる状態にまでなります。
もう一つの養生搔きは木を枯らすことなく、何年にもかけて漆を取り続ける方法です。 一年で採取出来る量は少ないですが長い目で見ると総量は多いです。
漆が採取できるようになるのは樹齢15年!
漆の樹液がとれるようになるのは植林した漆の木が樹齢およそ15年を迎えたときです。 6月から冬までの半年間にわたって漆搔きを行います。
漆搔き半年間のスケジュール
6月の作業始めは木の傷をつける2面を決め、木の皮を削る皮はぎと、漆を採る面に印をつける辺つけをします。 約1週間後に2辺目の傷を入れる上げ山という作業を行います。
7月下旬から8月中旬の間に盛り辺をを行います。 この盛り辺のときにとれる漆が最高級の漆になります。
9月に入って1か月間は末辺を行います。 秋に入っても木から漆がとれる状態にしておくのは職人次第です。
10月に入ってからは、これまで漆を取っていなかった面から漆を採取する裏目搔きを行います。根本ギリギリまで傷をいれます。
11月になると漆搔きも最終作業です。のこった取れそうな部分に傷を入れる止め搔きを行います。
これが殺し搔きの半年間のスケジュールです。
まとめ
昔に比べると漆の採取量は激減していて、輸入に頼っている部分が多いですが、現在いろいろなプロジェクトなどを通して、漆の木を守り続けています。 職人たちはウルシの木に感謝を忘れず最後の一滴まで大切に採取しています。
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